スポーツシーズンと療養費

健康保険や国民健康保険などの公的医療保険は、ふつう現物支給で、被保険者は自己負担分を支払い、残りは医療機関が保険者に請求する。だが、現物ではなく現金で給付されるときもある。要するに、自分でまず全額支払い、健康保険に請求してはじめて、金融機関の口座に7割分が振り込まれる、というやり方のことである。これを療養費払いというのだが、だいたい三通りある。
ひとつは、保険証を忘れて、医療機関で10割支払った場合(立替払)。ふたつめが、ギプスなどの治療用装具を装着した場合(治療用装具)。みっつめは、輸血のときに、保存血じゃなく、生血を使用した場合(生血)。「いきち」じゃなくて「せいけつ」ですよ。保存血だと現物給付なんだが、生血の場合は、血の提供者に支払う血液代金は、その場で全額支払い、のちほど7割が療養費の対象となる。よって、親兄弟などの親族からの生血の提供は、費用が発生しないので、療養費扱いにならない。
社労士になって6年以上たつが、「立替払」と「治療用装具」の請求はときどき書いているものの、「生血」の手続きはまだ一度もしたことがない。保存血では足りなくなって、緊急にだれかから輸血をする、となると大事故である。そうそう出てくるケースではないということだろう。
で、この療養費払い、行楽やスポーツのシーズンになると、よく発生するのである。立替払いは、旅行先に保険証を持っていかずに急病になった、なんてときに発生する。海外でもこれは同じ。
そして、治療用装具は、運動会やスポーツ大会のあとによく出てくる。子供の運動会の保護者種目の綱引きで、張り切りすぎて捻挫した、とか、草野球の試合で滑り込んだら骨折とか。
療養費の申請書類自体は、原因を書く欄はほんの一行ほどしかないのだが、労災事故や第三者行為と区別するため、「負傷の原因について」という別紙をいっしょに提出する。*1これには、「いつ」「どこで」「なんの目的で」「どんなことをしていて」「どういうようにケガした」と、詳細に書くようになっている。これを書くためにケガをされた本人に電話でインタビューすると、恥ずかしそうに教えてくれる人が多い。どうぞおだいじに。

*1:必ずしも同時に提出しなければいけないわけではなくて、療養費の申請書を単独で出すと、あとで社会保険事務所から「提出して」と送られてくる。