希望者全員を対象としない


(1)  定年(65歳未満のものに限る。)の定めをしている事業主について、65歳までの定年の引上げ、継続雇用制度の導入又は定年の定めの廃止のいずれかの措置(高年齢者雇用確保措置)を講じなければならないこととする。
 ただし、継続雇用制度の対象となる高年齢者に関する基準を労使協定により定めたときは、希望者全員を対象としない制度も可能とする。
 なお、施行より政令で定める日までの間(当面大企業は3年間、中小企業は5年間)は、労使協定ではなく就業規則等に当該基準を定めることを可能とする。
高年齢者等の雇用の安定等に関する法律の一部を改正する法律案の概要
「希望者全員を対象としない」つまり、会社の都合で今までどおり60歳定年で辞めてもらう人を決めることができる制度が、果たして「継続雇用制度」と呼べるのだろうか。
また5年間の時限措置ではあるが、「労使協定」ではなく「就業規則」での規定ができる、ということは、労働者の意見は聞く必要がないということである。就業規則の制定または変更の届けをするときは、労働者代表の意見書をつけることになっているが、その意見書で反対意見が書かれていたとしても、就業規則の効力には影響がないのである。
毎年定期的に新卒を採用するような大企業では、定年は厳格に適用されているのかもしれないが、中小企業ではだれかが辞めたら補充するだけ、とか、数年に1度数名の募集というところも多く、定年制が定められていても、定年を迎えた社員がそのまま勤め続けているところは多い。もちろん、機械的に全員の雇用がそのまま継続されるのではなく、会社の側から見た必要度によって、定年を理由に辞めてもらうなり、再雇用したとしても在職老齢年金とのからみで、給与を下げるということはよく見られる。
つまり、この法律案がそのまま通ったとしても、とくに中小企業にとっては、現在の定年の状況にさほど大きな変化はないと思われる。